相続に関する用語の解説
相続については、少し難しい用語がたくさんあります。その一部を、できるだけわかりやすく解説しています。 とはいえ、法律に関する用語も多く、まだまだわかりにくいかもしれません。そんな時はどうぞお気軽にお問い合わせください。50音索引
あ行
遺産分割 (いさんぶんかつ)
相続人が複数いる場合に、その相続人の間で遺産を分配することです。
遺産分割協議 (いさんぶんかつきょうぎ)
遺産分割の方法を相続人全員で話し合って検討することです。
遺産分割協議書 (いさんぶんかつきょうぎしょ)
相続人全員で遺産分割協議を行なった内容を、書面ににまとめたものを遺産分割協議書といいます。
遺産分割協議書には、誰が、どの相続財産を相続するのかを具体的に記載し、相続財産の受取人を特定できるようにして内容を明確にしておくべきです。
遺産分割協議書は必ず作成しなければならないものではありませんが、後日の紛争を防止するためや相続手続上必要な場合もあるので、作成しておくことが望ましいです。また、遺産分割協議書は相続人の人数分を作成し、各自1通ずつ保管します。
なお、遺産分割協議書は、不動産の相続登記、金融機関に預けてある資産の相続手続きの際などに使用します。
遺贈 (いぞう)
被相続人が遺言により財産を与えることです。
遺留分 (いりゅうぶん)
遺留分とは、民法によって兄弟姉妹(甥・姪)以外の法定相続人に保障された相続財産の最低限度の割合のことをいいます。
本来、自己の財産は生前贈与や遺言によって、原則自由に処分することができますが、この遺留分制度によって被相続人の処分が一定限度で制限されています。
ただし、遺留分を侵害する生前贈与や遺贈が無効になるというわけではなく、遺留分の減殺請求によって初めてその効果が覆されます。
ここでいう遺留分を有する者は、兄弟姉妹とその代襲者(甥・姪)以外の相続人、すなわち子とその代襲者(直系卑属)、直系尊属および配偶者です。なお、遺留分を侵害された相続人は、侵害した受遺者や受贈者等に対して、遺留分の減殺請求を行うことができます。
遺留分減殺請求 (いりゅうぶんげんさいせいきゅう)
遺留分を侵害された相続人は、侵害した受遺者や受贈者等に対して、遺留分の減殺請求を行うことができます。この減殺請求権は相続の開始および減殺すべき贈与、または遺贈があったことを知ったときから1年間、あるいは相続の開始後10年を経過すると時効により消滅します。
なお、遺留分減殺請求は、その証拠を残すという意味で、配達証明付きの内容証明郵便で行うのが一般的です。
延滞税 (えんたいぜい)
税金の一部または全部を期限までに納税しない場合に課せられる税金です。
エンディングノート (エンディングノート)
主に人生の終末期に自身に生じる万が一のことを考え、事前に家族や友人へのメッセージを書いたり、医療・介護や葬儀の希望等を書き留めておくノートのことです。記載する内容は形式に囚われることなく自由ですが、法的効力はありません。
か行
過少申告加算税 (かしょうしんこくかさんぜい)
申告税額が正しい額より少なかった場合に本税に加算されて徴収される税金のことです。過料 (かりょう)
国または地方公共団体が行政上の軽い禁令を犯した者に対して科する金銭罰。「あやまちりょう」とよぶこともあります。
換価分割 (かんかぶんかつ)
相続財産を売却換金して、その売却代金を相続人間で分配する方法です。
限定承認 (げんていしょうにん)
相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐことです。
限定承認を選択する場合は、自己のために相続の開始があったことを知った日から3カ月以内に、相続人全員が共同で被相続人の住所地の家庭裁判所に申述する必要があります。
検認 (けんにん)
遺言書を作成した者が死亡した場合、遺言書を預っていた者、あるいは発見した相続人は、遅滞なく家庭裁判所に「遺言書の検認」を申し立てる必要があります。この「検認」とは、相続人等に対し遺言の存在を通知するとともに、遺言書の形状や内容等を明確にし、後日の偽造・変造・隠匿・滅失等を防止し、遺言書を確実に保存するため(証拠保全)の手続きです。
また、「検認」は証拠保全にすぎないので、遺言書の有効性を判断する手続きではありません。家庭裁判所では、「検認」が終了すると、その結果を「検認調書」に記載します。この「検認調書」は、検認終了の証明のことです。なお、公正証書遺言は、偽造・変造の恐れがないものとして「検認」を申し立てる必要はありません。
公証人 (こうしょうにん)
当事者やその他の関係者の依頼によって公正証書を作成したり、私製証書等に認証を与えたりする権限を持つ者を公証人といいます。
公正証書 (こうせいしょうしょ)
公証人が法律上の権利等に関する事実について作成した証書のことです。
さ行
死因贈与 (しいんぞうよ)
贈与者の死亡によって効力を生じる生前の財産の贈与契約のことです。遺贈と同じ扱いになり、相続税の課税対象になります。
死亡退職金 (しぼうたいしょくきん)
被相続人が在職中に死亡した際、遺族に対して支払われるもので、退職手当金や功労金等その他これに準ずる給与等が該当します。みなし相続財産として、相続税の課税対象になります。
死亡保険金 (しぼうほけんきん)
被保険者が死亡したことにより支払われる保険金のことです。
受遺者 (じゅいしゃ)
遺言によって遺贈を受ける人。受遺者は自分の意思によって遺贈を受けることも放棄することもできます。
受贈者 (じゅぞうしゃ)
贈与を受けた人を受贈者といいます。
準確定申告 (じゅんかくていしんこく)
相続税の申告とは別に、被相続人の生存中の所得にかかる所得税について、相続人が代わりとなり申告・納税することです。
相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内に申告・納税する必要があります。
小規模宅地等の特例 (しょうきぼたくちとうのとくれい)
相続税の計算上、被相続人等の自宅や事業用の敷地の評価について、一定の要件を満たすことで80%の減額が認められる特例です。
平成27年より、自宅の面積が240㎡から330㎡へ、自宅と事業用の一方のみから両方へと対象が拡大されました。
審判 (しんぱん)
裁判所が“相続争い”などの事件を審理して判断、または判決を下すことです。
推定相続人 (すいていそうぞくにん)
現状のまま相続が発生した場合に相続人になるべき者のことです。
成年後見人制度 (せいねんこうけんにんせいど)
認知症や知的・精神障害等で判断能力の不十分な人を保護する制度で、家庭裁判所が決めた成年後見人が、本人に代わり財産管理等を行います。
相続時精算課税制度 (そうぞくじせいさんかぜいせいど)
2,500万円まで課税されずに贈与できる制度で、贈与された財産は贈与者が亡くなったときに贈与時の価額で相続財産に加算され、相続税で精算されます。
ただし、適用には一定の要件があります。なお、平成27年から贈与者が65歳以上から60歳以上へ、受贈者が20歳以上の子から20歳以上の子および孫へと、対象者が拡大されました。
相続税の延納 (そうぞくぜいのえんのう)
一定の要件を満たすことで相続税を分割して納税することです。
相続税の基礎控除額 (そうぞくぜいのきそこうじょ)
税額を計算するうえで一定額差引くことのできる金額のことです。
相続税の場合は、[3,000万円+法定相続人の数×600万円]で計算されます。なお、平成26年末までの相続または遺贈については、5,000万円+法定相続人の数×1,000万円で計算されていました。
相続税の障害者控除 (そうぞくぜいのしょうがいしゃこうじょ)
相続人が障害者である場合、一定の範囲内で相続税が控除されます。
85歳に達するまでの年数1年につき10万円(特別障害者は20万円を障害者控除として相続税額から差し引くことができます。年数の計算にあたり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
なお、平成26年末までの相続または遺贈については、上記控除額が6万円(特別障害者は12万円)でした。
相続税の物納 (そうぞくぜいのぶつのう)
相続税を現金以外のもので納めることです。
相続税は現金で納付することが原則ですが、これが困難な場合に、一定の条件を満たすことで相続した財産(不動産、骨董品等)を現金の代わりに納めることが認められています。
相続税の未成年者控除 (そうぞくぜいのみせいねんしゃこうじょ)
相続人が未成年である場合、一定の範囲内で相続税が控除されます。
20歳に達するまでの年数1年につき10万円を未成年者控除として相続税額から差し引くことができます。年数の計算にあたり、1年未満の期間があるときは切り上げて1年として計算します。
なお、平成26年末までの相続または遺贈については、上記控除額が6万円でした。
相続放棄 (そうぞくほうき)
相続が発生した際、プラスの財産もマイナスの財産(借金)も一切相続しないことです。
相続放棄をする場合は、自分に相続権があることを知った日から3カ月以内に、被相続人の住所地の家庭裁判所に申述しなければなりません。相続放棄するとその法定相続人は初めから相続人でなかったことになります。
贈与税の基礎控除額 (ぞうよぜいのきそこうじょ)
贈与税を計算するうえで一定額を差し引くことができる金額のことです。
暦年贈与の場合、受贈者(贈与を受けた人)1人当たり年間110万円まで基礎控除があります。
贈与税の配偶者控除 (ぞうよぜいのはいぐうしゃこうじょ)
配偶者が居住用不動産またはその購入資金の贈与を受けた場合には、贈与税の計算上、配偶者控除として最高2,000万円の特別控除が認められています(適用には一定の要件があります)。
た行
代襲相続人 (だいしゅうそうぞくにん)
相続人となるはずであった子または兄弟姉妹が、被相続人より先に死亡した場合や、相続欠格や推定相続人の廃除によって相続権を失った場合、その者に代わって相続人となる者を代襲相続人といいます。
子の代襲相続は孫、孫が被相続人より先に死亡している場合等はひ孫、というように無制限に下ります。一方、兄弟姉妹の代襲相続は、甥・姪までとなります。
調停 (ちょうてい)
民事上または家庭内の紛争を解決するために、裁判所が仲介して当事者間で和解させることです。
直系尊属 (ちょっけいそんぞく)
「直系」とは、いわゆるタテの血縁関係で、「尊属」とは目上の者の意味。したがって、自分の父母、祖父母、曾祖父母などを指します。
直系卑属 (ちょっけいひぞく)
「直系」とは、いわゆるタテの血縁関係で、「卑属」とは目下の者の意味。したがって、自分の子、孫、曾孫などを指します。
定期贈与 (ていきぞうよ)
定期的に一定の財産を贈与することです。
例えば、一般的な贈与(暦年贈与)では年間110万円までは非課税になりますが、「今後10年に渡って毎年100万円ずつ、総額で1,000万円を贈与する」という定期贈与契約は、初年度に定期金に関する権利(10年間に渡り毎年100万円ずつ給付を受ける権利)の贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます。
な行
二次相続 (にじそうぞく)
夫婦の一方が亡くなった際の相続を一次相続といい、その後さらにもう一方の配偶者が亡くなった際の相続を「二次相続」といいます。
は行
配偶者の税額軽減特例 (はいぐうしゃのぜいがくけいげんとくれい)
配偶者が相続または遺贈により取得した財産のうち、法定相続分または1億6,000万円のどちらか大きい額まで、相続税が課税されない特例のことです。
被相続人 (ひそうぞくにん)
相続人が相続によって取得した資産のもとの所有者(故人)のことをいいます。
負担付贈与 (ふたんつきぞうよ)
受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与のことで、個人から負担付贈与を受けた場合は贈与財産の価額から負担額を控除した価額に課税されます。
法定相続人 (ほうていそうぞくにん)
法定相続人とは、民法で定められた相続人のことをいいます。
被相続人の配偶者は常に相続人となります。
第一順位の相続人・・・被相続人に子がある場合には、子と配偶者が相続人となります。
ただし、子が被相続人より先に亡くなっている場合等は、直系卑属(孫・ひ孫等)が相続人となります(=代襲相続)。
第二順位の相続人・・・被相続人に子およびその直系卑属がない場合等は、直系尊属(父母・祖父母等)と配偶者が相続人となります。
第三順位の相続人・・・被相続人に子およびその直系卑属がなく、直系尊属も死亡している場合等は、兄弟姉妹と配偶者が相続人となります。ただし、兄弟姉妹が被相続人より先に亡くなっている場合等は、その者の子(甥・姪)が相続人となります(=代襲相続)。
※下位順位の者は、上位順位の者が死亡や相続放棄等をしない限り相続権はありません。例えば、子が被相続人の財産を相続する場合、被相続人の直系尊属や兄弟姉妹には相続権はありません。
※配偶者が被相続人より先に亡くなっている場合には、配偶者以外の相続人がすべての財産を相続します。
法定相続分 (ほうていそうぞくぶん)
法定相続分とは、共同相続人が取得する相続財産の民法に定められた相続割合(下表参照)のことをいいます。
法定相続人の順位により法定相続分は異なります。また、同順位の法定相続人が複数いる場合は、その人数で均等に分けます。
被相続人の死亡によって相続が開始した場合に、遺言によって遺産の処分が定められているときには、その被相続人の遺言によって決められます。遺言による指定がないときは、原則として法定相続分によります。ただし、各相続人の間でその分割方法について遺産分割協議が成立すれば、遺言や法定相続分による必要はありません。
なお、相続人以外を受遺者とする遺言がある場合(包括遺贈)には、当該受遺者が遺贈を放棄しない限り、当該受遺者を参加させて遺産分割協議を行う必要があります。
ま行
みなし相続財産 (みなしそうぞくざいさん)
被相続人の死亡時においては同人の財産ではないが、同人が亡くなったことによって相続人が相続する財産のことです。
例えば死亡保険金や死亡退職金等、実質的には相続や遺贈により取得したのと同じ経済効果があると認められるものは、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。ただし、原則として遺産分割協議の対象外です。
無申告加算税 (むしんこくかさんぜい)
申告期限を過ぎても申告書を提出しなかった場合、あるいは提出が申告期限後になった場合に本税に加算される税金のことです。
や行
遺言執行者 (ゆいごんしっこうしゃ)
遺言執行者とは、遺言の内容を実現することを職務とする者のことをいいます。
遺言執行者は、相続財産の管理や遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有します。遺言書に遺言執行者の指定がないか、または遺言執行者が亡くなった場合には、必要に応じて家庭裁判所に遺言執行者の選任の申し立てをします。遺言執行者は、遺言書に基づき各金融機関等の相続手続きを行い、遺言書に指定された者に相続財産を渡します。
遺言書 (ゆいごんしょ)
遺言書の作成方式は、民法に定められています。
民法の定めている遺言の方式には、「普通方式」と「特別方式」の2種類があり、通常、「普通方式(自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言)」により遺言することになりますが、死亡の時期が危急に迫っている場合や遺言者が隔絶地にいる場合には、「特別方式」によることになります。
ら行
利益相反行為 (りえきそうはんこうい)
ある行為が、一方の利益になると同時に、他方への不利益になる行為のことです。
暦年贈与 (れきねんぞうよ)
毎年1月1日~12月31日までの間(暦年)に受けた贈与財産の合計額に応じて贈与税を払う、いわゆる一般的な贈与のことです。
路線価 (ろせんか)
相続税額等を計算するうえで、宅地の評価額の基準となる価格のことです。